その場所を訊きだすのが愉しみですたい【時間の習俗】
福岡県太宰府市をメインに東西へのびる古の防衛施設『水城跡』。

その水城跡が舞台として登場するという、大御所の名作があるとききましたので、

さっそく図書館へダッシュして、書籍『時間の習俗/松本清張』を借りて読んでみたんです。今回はそのお話になります。
(※以前水城跡を訪ねたお話はこちらで!↓)
ここからはネタバレしかしませんので、くれぐれもご注意ください。↓
さて物語は、旧正月の門司区和布刈神社で行われる神事の描写から始まります。
旧暦の大晦日から元旦未明にかけ、神楽を奏する中、三人の禰宜が若布を刈りとり神前に備える、という和布刈神社の行事。
行事には多くの見学者が駆けつけて、その神秘的な様子を写真に収めるといいます。
場面は変わり、舞台は神奈川県相模湖へ。ここで第一の事件が発生します。ことの次第はこんな具合。↓
東京から相模湖のホテルを訪れたカップル。二人で散歩に出かけるも、男は遺体で発見。名前は土肥武夫、交通業界紙の編集長。
一方の女はというと、あとかたもなく消えてしまったのでした
事件を担当するのは、三原警部補。捜査が進むうちに、三原はタクシー会社の専務である峰岡周一を容疑者としてロックオンします。
俳句を嗜み、カメラを趣味に持つ峰岡周一。警察の追及に対し、事件当日には和布刈神事を見学していたと証言し、趣味のカメラで撮った写真を証拠として差し出すのでした。
捜査が難航する中、第二の事件が発生。今度は太宰府市の水城跡で遺体が発見。被害者の名は須貝新太郎(芳子)。

ちなみに!容疑者峰岡は以前の捜査において、俳句作りのために都府楼址(大宰府政庁)へと足を運んでいたことも証言していました。

大宰府政庁といえば水城跡からほんのすぐの距離。あれひょっとして!?やっぱり峰岡さん!?あなた!?
(※以前、大宰府政庁を訪ねたお話はこちらで!↓)
そんな中、福岡署の鳥飼刑事が捜査協力のため上京することに。鳥飼刑事といえば!?

そうなんです。小説『点と線』にて事件を解決に導いたあの伝説の二人が再びタッグを組むのだ!清張大サービスのバディ展開。
ちなみにこの展開について、『時間の習俗』巻末の解説には、↓
『時間の習俗』は、雑誌『旅』に連載。『旅』はかつて『点と線』を載せたことがある
とありました。では物語に戻ります。水城事件における、作品中での水城界隈の描写はこんな具合。↓
昼間だとわりと人目が多い。築堤の切通しには鹿児島本線が走っている。往還はずっと南の山寄り。現場付近には道幅は狭いが県道が通っている
県道が走り、そのそばには水城の切り通しがある、という描写から考えて、この辺りが現場でしょうか!?

ただここが事件現場だとすると、鹿児島本線までの距離はやや遠くなっちゃいます。

切り通しだから西門跡の辺りのこと!?

ここだと、鹿児島本線はすぐそば。

(※西門を訪ねたお話はこちらで!↓)
ですが!のちに鳥飼刑事が水城を訪ねた際の描写では、↓
西鉄電車が響きを立てて通過した
という記述がありましたので、

音が聞こえるくらいの場所なら、やっぱりこの辺りが正解ぽいかも。

とにもかくにも、物語中に見知っている場所が多く登場するので、作品に対して親近感が半端ないです。楽しい。

作品内では他にも、例えば天神の西鉄電車定期券売り場だとか岩田屋デパート、

武蔵(二日市)温泉それから、

福岡城近くの会社の寮などなど、馴染み深い場所や地名があちこちに。

そしてこれらが昭和30年代当時の福岡の空気感とともに鮮やかに描かれているのでした。

さらに言えば、福岡の俳句同人誌「筑紫俳壇」の主催者が虚子の門下だったり(作品中)、そんな細かな設定にも隙がありません。素晴らしい清張。
(※大宰府政庁隣にある虚子の帯塚を訪ねたお話はこちらで!↓)
まず大前提としまして、『時間の習俗』は昭和37年に発表された作品。ですので、例えば、重要なアリバイ崩しの場面にて、フィルム現像のトリックが当時ゆえの技術によるものだったり。
そういった時代背景の違いが、現代目線での謎解きにとってはさらなる難解さにつながったり!?逆に面白みが増すとも言えるのかな。
作品の大きな流れとしては、終盤前辺りにどんでん返し的仕掛け(芳子)が明らかになり、
それきっかけで、これでもかという緻密な犯行計画がぽろぽろと崩れ出すという、スリル満点の作品でした。
最後に。タイトルである『時間の習俗』というのはどういう意味なんでしょう。「習俗」というのは、↓
ある地域やある社会で昔から伝わっている風俗や習慣。 風習。 ならわし。
とありました。これはそのまま「和布刈神事」を指してそう。ではもう一方の「時間」が指すものはというと、フィルムトリックによる時間の歪み!?
え?そんな単純じゃない!?まじで!?完。




