来てくれんばいちゅうてからに【武田イク/なんばしよっとか】
先日、俳人しづの女の一生を描いた作品を読んだお話をしました。
偉大な先人の伝記を読み、その人生をこっそり追体験するのが楽しくて、
また新たに本を読んでみたんです。今回は武田イク氏による書籍『なんばしよっとか』。

こちらは自伝というのか、これまでの人生を振り返ってぽつぽつ一人語るエッセイ集のような内容です。
それではさっそく、書籍より気になるポイントを参照させていただきながら、皆さまと読んでいきましょう。(※敬称略とさせていただきます)
小学校6年生を終えるや洋服屋へ修行に出るイク。4年の修行を経て博多の鉄工所に働く男性を婿養子に結婚します。
戦争がはじまり、板付空港から飛び立つ友軍機の様子だとか終戦時の米軍上陸のことなど、経験に即したリアルなお話が生々しく語られます。
そして鉄矢の誕生。文字通り「鉄の矢」から名づけられたとのこと。鉄工所の「鉄」も関係あったりするのかな。
食糧事情の悪かった時代の武田家5兄妹の関係性や夫婦喧嘩のエピソードもたっぷり語られます。
そのエピソード中には例えば雑餉隈駅だったり麦野というローカルな地名が出てきて、スターを身近に感じることが出来ます。
3号線沿いに小さい川が流れていて、魚捕りによく行っていたなんてお話も楽しいもの。
武田鉄矢がどうこうというよりも、戦後の博多の一つの家庭の様子をのぞき見るような前半部分の語りでした。
ちなみに武田鉄矢のお母様として良く知られるストーリーに、タバコ屋のお話があります。
イクがタバコ屋を始めたのは、家の100メートル先がタバコ屋でその人が満州に行くことになり、そこへはいったというかたち(p180)なんだそう。
経済的に厳しい中、タバコ屋を始めたあとには豆腐の行商を始め、春日原の米軍宅にてハウスメイドも始めたというバイタリティ具合。
そんな親の苦労を鉄矢は良く見ていた、とイクは語ります。そして鉄矢は頭が大きくてしゃべりがうまかった、と昔を思い出すのでした。
高知大学に落ちた時、竜馬に見放されたと涙ぽろぽろ流した鉄矢。
海援隊を作ってもヒット曲が出なかった鉄矢。
「はがきを千枚くらい配っとる。わたしは」と語るイク。
ある日「母に捧げるバラード」が流行っていることを知ります。「幸せの黄色いハンカチ」に俳優として起用される鉄矢。
「あんたが大将」もヒット。金八先生として活躍し「贈る言葉」が大ヒット。スター街道爆走状態。
博多そして雑餉隈から大スターの誕生です。のちに振り返ってイクはこう語ります。
幸せは待ってって来るもんじゃない。やっぱ追っかけていかにゃいかんのですよ。
一日でいいけ、来てくれんばいちゅうてからに、呼び寄せにゃいかんですよ(笑)
終わり。





