心霊スポットとよばれて【米一丸地蔵尊】
福岡市東区の箱崎で不思議な石塔を見つけました。
赤い六角堂の中にある高さ4.2mの九重の塔。
『米一丸地蔵尊』と呼ばれているのだそうです。
「米一丸」の読み方はよねいちまる。いったいなんのためのものなのでしょう。
これは、悲しいサダメに振り回された一人の男「米一丸」を供養するために建てられた石塔なのでした。
時は鎌倉時代。
主人公は駿河(現在の静岡県中部)に住む木嶋長者の息子である「米一丸」。
文武に秀で、さらに見た目も麗しい20歳の青年。
その上、美人で評判であった八千代姫と結婚したばかり。人生の絶頂を迎えていたわけです。
とある日、「米一丸」は妻と共に主人である一条殿へあいさつに京へ向かいます。
この一条殿、八千代姫にひとめぼれ。なんとか自分のものにしてやろうと決心したのでした。
けれど相手は人妻です。さてどうしたものか。
「もう殺っちゃうか」
そこで、とある計画を思いつくのでした。
「博多にある名刀があるので、それを八千貫の金で引き取ってきてくれ」
一条殿は「米一丸」にそう命じました。
「米一丸」を博多へ向かわせて、そこで殺っちまおう。これが一条殿の計画。博多の奉行にも話をつけてあります。
長い船旅の末、ようやく博多へ辿り着いた「米一丸」。
なんとか名刀の取引は上手くいき、一安心です。
するとそこへ現れた奉行。「米一丸」を歓待し、酒盛りに誘います。
勿論「米一丸」を暗殺するために。
眠ってしまった「米一丸」。外のざわめきにふと目を覚まします。
時すでに遅し。宿は敵に包囲されていたのでした。
お供とともになんとか抵抗するものの、武芸に達者な「米一丸」も数の力には勝てません。
逃れ逃れて、ここ千代の松原(現在の箱崎)へ。
ついになすすべなく「米一丸」は自害。
そしてしばらく後、その米一丸の墓前で、遊女の村雲もまた自害したのでした。
まあ、ここまでは一条殿の狙い通りです。
は?村雲って誰!?というところもありますが、時代的にはありうる話なのでしょう。
その後が問題なのです。
「米一丸」の妻である八千代姫もまた、その四か月後に博多へやってくるのです。
そして彼女もまた「米一丸」の墓前で自害してしまう。
え!?一条殿??そこは引き止めなきゃ。
ここまでやっておいて最後の最後になぜ。
締めが肝心ですよ!!
引き止められないほど愛の力は強かったというオチで、結果としてはよかったのかもしれません。
一条殿自身、もうどうでも良くなっていた可能性も。
とにかく誰一人幸せにならない悲しいお話ですね。
そんな逸話を持つせいか、この米一丸地蔵尊近辺は心霊スポットの一つとしても知られているそうなんです。
今でもまだ「米一丸」の無念が漂っているのでしょうか、踏み切りそばのこの場所では良からぬ噂が絶えなかったのだとか。
でも、今は高架となり安心安全!!
「米一丸」も安心安心!!
【米一丸地蔵尊】
福岡市東区箱崎6丁目6-2