鼓鳴りやむ【綾の鼓/三島由紀夫戯曲全集 上巻 新潮社】

つい先日、書籍「福岡の昔ばなし」を読んだ時に、

気になるお話として「綾の鼓」を参照させていただきました。

お話の終わりには解説がついてあって、こんなことが記してあったんです。↓

今からおよそ800年前、世阿弥元清が謡曲「綾鼓」を創作して広く知られるようになりました。後年、この曲をもとに三島由紀夫が「近代能楽集・綾の鼓」を発表して話題になりました

とのこと。ほう。ということは、ですよ。朝倉の昔ばなしは世阿弥の創作が元になっているってこと?いや逆に世阿弥が福岡の昔ばなしを参考にしたことになる?

 

詳細はよく分かりませんが、解説欄に紹介されていた三島由紀夫の書籍を今回読んでみましたので、そのお話をしたいです。

いつものように気になる箇所を参照させていただきながら、近代能楽「綾の鼓」について学べればと思います。よろしくお願いします。

ではさっそく始めます。場面はとある下手の部屋から始まるのであった。↓

部屋にはまず老人が一人。彼は岩吉という小使。それから仕事終わりの女事務員加代子。この二人の会話から物語は転がり始めるのでした

加代子は岩吉にこんな軽口を叩きます。↓

おじいさんも片思いをしているのね。相手は貴婦人で、名も分からない。いい返事まだ来ないの?これまで30通も私がメッセンジャーになって渡しているのに

すると岩吉はこうこたえます。↓

片思いは辛いものさ

そして今日も奥さんへの恋文を書きあげるのでした。ここで場面は上手の部屋へと移ります。

上手の部屋の中には、踊りの師匠やマダムを含めた数人が、奥さんなる人物を待っている状態。↓

そこへ加代子が、岩吉から預かった奥さんあての恋文を渡しにやってきました。受け取るのは奥さんではなくマダム

そう、いつもマダムが加代子から岩吉の手紙を預かり、肝心の手紙は奥さんへ渡されることは一度となかったのです。

そういった岩吉と奥さんの関係を理解した上手部屋一同。いっちょ岩吉をからかってやろうと、こんな計画を立てるのでした。↓

舞踏劇の小道具である鼓がここに一つある。この鼓には綾が貼ってあり音が出ないんだ。これを使って岩吉へいたずらをしようじゃないか

まずはこの鼓を岩吉のいる下手の部屋へと投げつける。鼓には文を結びつけて、こう記しておくんです。↓

岩吉さん、どうか鼓を打ってください。こちらの窓まで鼓の音が届いたら、あなたの思いをを叶えてあげます

そして岩吉を呼び出し窓をあけてもらうや、そこへ鼓を投げつけるのでした。

鼓を受けとり文を読んだ岩吉。さっそく鼓を打ち始めます

だがしかし打っても打っても音は鳴らないではないですか。そこで岩吉はこう思います。

ひょっとして自分はからかわれているのか。みなに笑われているようで、とてもぐやじい

悲しみに沈む岩吉。ふらふらと窓枠をまたぎそのまま身を投げてしまったのです。

のち、岩吉じいのいた下手部屋へとやってきた奥さん(華子)。そこで居るはずのない亡くなった岩吉へお悔みの声をかける。すると、なんと返事がかえってくるではないですか。

そこで奥さん、果敢にもこんなことを岩吉(霊)へ伝えるのでした。↓

あなたの服だとか髭とか汚れたシャツはまあいいわよ。でもなにかが足りないのよ、あなたには

すると岩吉(霊)は奥さんに↓

あなたは私の執念を恐れているに違いない

とか言い放つ。そしたら奥さん、こんなことを言いだします。↓

あなたは私にいい名をつけて下さったの。むかし私は三日月と呼ばれていたのよ。だってあたくしのお腹には三日月の刺青があるから。男が無理やり彫ったの

岩吉(霊)はこう言い返します。↓

わしは真心ゆえに愚弄された。お前を祟ってみせる

穏やかではないです。もう興奮状態の岩吉です。それに対し奥さん、↓

私は強くなりました。だってあなたに愛されたから

これって会話成立してそう?それはともかく岩吉(霊)はこう言うのでした。

鼓のせいだ。綾の鼓は鳴りはしない。でもわしは鼓を鳴らしてみせる

すると奥さん、↓

さあ鳴らしてちょうだい。あたくしは聴きにまいりました

お話はここしばらく妙なテンションで進んでいます。さて岩吉(霊)、↓

鳴らしてみせる。わしの恋が綾の鼓を鳴らしてみせる。ほら鳴った!

しかし奥さんは渋いんです。↓

きこえません、どこで鳴っているの

岩吉(霊)、テンションマックス。↓

10,20,30。鳴ってる鳴ってるう

奥さんも負けてはいません。↓

聞こえない聞こえないあー聞こえない。はよ鳴らして。あきらめないで

ところが岩吉(霊)、さくっと根負けです。

だめだめもーだめ。無理だわ。さようなら

そうして亡霊は消えてしまいました。そこへあらわれた奥さんの仲間。↓

奥さん、しっかりしてください

すると奥さん(夢うつつ)、↓

あと一つ打てばきこえたのに

完。スピード感のあるお話に仕上げた三島由紀夫。ちなみに昔ばなしバージョンでは謎かけのやり取りがあったり、相手は若い娘であったり、その娘もじいさん同様に最後は発狂しました。

結局、どちらもなんだかなあという結末。でも楽しいお話でした。終わり。

(※書籍「綾の鼓/三島由紀夫戯曲全集 上巻 新潮社」)を参照させていただきました。